化石が伝える北海道の歴史
こんにちは、えぞまち歴史部です。
自分たちが今住んでいる場所が、かつてはどのような姿であったのか、数十年前や100年前ですら、資料がなければ正しい姿は想像するほかありません。
それが何千万年前というと、もうまったく想像の範囲外、未知の領域に思えます。
そうした大昔の北海道の姿の一部を伝えてくれているのが、地層から発掘される「化石」です。
今回は、むかわ町穂別にある「穂別博物館」で、この地域で発掘された化石を閲覧してきました。
「穂別博物館」とは?
むかわ町穂別の「穂別博物館」は、むかわ町穂別地域から産出した化石が展示されている博物館です。
この後に詳しく解説しますが、当時の穂別地域は海の中だったとのことで、産出された化石もやはり海洋生物が多かったようですが、一部陸上生物の化石も産出しているようです。
スポンサーリンク
館内に入ってすぐ!大迫力の「首長竜」
さて、さっそく穂別博物館館内へ入ると、まず最初に「首長竜」が出迎えてくれます。
首長竜は首の長さがあるので、数字での全長以上の迫力があります。
この首長竜は全長約5mと推定され、むかわ町穂別長和で産出した化石とのことです。
それにしても、地図で見ると今は完全に内陸ですが、やはり何千万・何億年という時代の流れの中で、地形なども現代とは比べ物にならないほど変わっていることがうかがえます。
ちなみにこの首長竜は、分類的には「爬虫綱鰭竜目長頸竜亜目プレシオサウルス上科ポリコティルス科」に属する首長竜です。
ポリコティルス科の首長竜は、首長竜の中では首が短いという、「何を言っているんだ?」とツッコみたくなってしまうような特徴があるのですが、それはさておき…。
このポリコティルス科の竜は、白亜紀後期(約1億年前から7,000万年前ごろ)のものとされています。
「ポリコティルス科」に属する「ドリコリンコプス属」という竜が北アメリカで発見されているのですが、この属に与えられた「ドリコリンコプス」という言葉は古代ギリシャ語で「長い鼻の顔」という意味があり、この穂別で産出された首長竜も同様に長い鼻・口部分の特徴がありますね。
この口は魚や頭足類(イカ・タコ・オウムガイ類など)をとらえる役割を果たしていて、強力な歯で獲物を逃さないように捕獲していたようです。
櫂(オール)状の四肢も首長竜らしい特徴です。
<映画「ドラえもん のび太の恐竜」に登場した「フタバスズキリュウ(ピー助)」にも似ていますね。
スポンサーリンク
![]() |
価格:1,850円 |

穂別産の「竜の神」!?「カムイサウルス・ジャポニクス(むかわ竜)」
さて、視線を巡らせますと…こちらの壁面にも大きな竜が展示されています。
こちらが通称「むかわ竜」こと、「カムイサウルス・ジャポニクス」です!
カムイサウルス・ジャポニクス(Kamuysaurus japonicus)という名前は、2019年9月に学術論文が出版され、正式な学名として付与された名前です。ではそれまではというと、2016年12月以降は、通称として「むかわ竜」が使われていました。このカムイサウルス・ジャポニクスが最初に発見されたのは2003年4月のことで、穂別町在住の堀田良幸氏が散歩中に発見しました。
発見当初はクリーニング作業や調査が後回しにされてしまったという経緯があったようですが、2010年からカムイサウルス・ジャポニクスの化石のクリーニング作業が進められ、2013年9月~10月と、2014年9月にそれぞれ発掘調査、2015年と2016年にも補足の発掘調査が行われ、全身の6~8割の骨化石が確認されました。
これらの化石入りの岩石の総重量は6トンにも及んだとのことですから、発掘調査というものが並大抵のことではないと感じさせられます。
さて、「カムイサウルス・ジャポニクス」がどんな竜だったのかということですが、分類としては「ハドロサウルス科ハドロサウルス亜科エドモントサウルス族」となります。
先に解説した、「カムイサウルス・ジャポニクス」の最初の化石を発見した堀田氏は、当初この化石を大きなワニのものではと思っていたとのことですが、この化石が発見されたエリア(現在は沢沿いの崖)は、先の項でも触れたとおり海であったとされていて、事実アンモナイトなどが発掘されることで知られており、地層も海成層(蝦夷層群最上部の函淵層と呼ばれる地層)であったようです。
ちなみに函淵層からは、主に二枚貝類、アンモナイトのほか、無脊椎動物の化石、そして「海トカゲ」の俗称で知られる「モササウルス科」の化石が産出されます。
そのため当初は、このカムイサウルス・ジャポニクスの化石も首長竜の一種と考えられたのですが、実際にクリーニング作業を行ってみると、「恐竜」のものであることが判明したというわけです。
(※「恐竜」という言葉には、翼竜・魚竜・首長竜等は含まず、「直立歩行に適した骨格を持った地上棲爬虫類」のことを指す)
こうしたクリーニングと調査の結果を受けて、このカムイサウルス・ジャポニクスについては、「陸上に生息していたにもかかわらず、海(しかも沖合い)の地層から化石が発見された」ということになり、そこから「一部の恐竜は、海岸線近くに生息し独自の進化を遂げたのではないか」という新しい考え方が生み出されたのです。
スポンサーリンク
もうひとつの見どころ「野外博物館」
この穂別博物館には、もうひとつの見どころ、「野外博物館」というものがあります。
「タイムトンネル」を抜けて、白亜紀の時代へタイムスリップ…!この構成を考えた方は素晴らしいですね。




トンネル内部では、かつての地球で生活していた生物たちが出迎えてくれます。このトンネル内部の生物は、カンブリア紀以降の6億年の間に、海で生まれた生物たちです。
さて、こちらが野外博物館。


「中新世(新生代)後期」の二枚貝・カニ、


先に触れた白亜紀後期の海に繁栄したモササウルス科の仲間、「ティロサウルス」の頭部や、同白亜紀の古代魚、
「ジュラ紀」のアンモナイト、
「カンブリア紀」の三葉虫などが展示されています。
高台となっている場所には、首長竜が覗き込んでいます。高台から見下ろすとなんとも迫力がありますね。


自然の中の野外博物館といった趣がある素敵な場所ですが、今後さらに資料や説明などが追加されていくのでしょうか。楽しみです!
スポンサーリンク
施設情報
○施設名:むかわ町立穂別博物館
○住所 :〒054-0211 北海道勇払郡むかわ町穂別80−6
○URL :http://www.town.mukawa.lg.jp/1908.htm
○地図 :