札幌市にあるアイヌ文化を伝える施設!
ウポポイのオープンや、「ゴールデンカムイ」の流行などの背景もあり、かつては「教科書で見たことがある」という程度だった人が多かったアイヌ文化や歴史への関心が高まっているように感じます。
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アイヌの歴史や文化を紹介する施設として、白老町にオープンした「ウポポイ(民族共生象徴空間)」は、広い敷地内に様々な資料・所蔵品の展示があるほか、体験型の展示なども数多くあり有名です。
しかし、札幌市内にもウポポイに勝るとも劣らない体験ができる施設があります。それが、札幌市南区小金湯にある「サッポロピリカコタン(札幌市アイヌ文化交流センター)」なのです。
サッポロピリカコタンではどのような展示が見られる?
札幌市民には馴染み深い温泉地である「定山渓温泉」、そのやや札幌中心街側に「小金湯温泉」があります。サッポロピリカコタンはその小金湯温泉に隣接する場所に位置しています。
ここでは、職人の手によって復元されたアイヌの衣装、生活用具や装飾品など多数の資料の展示を見ることができます!
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入口では「コタンコロカムイ」がお出迎え
入口には、村を守る神様として扱われていた「コタンコロカムイ(シマフクロウ)」をかたどったオブジェがあります。
こちらは飛んでいるコタンコロカムイでしょうか。ちなみにアイヌ民話には、洞窟に住み、片翼約7里(約30km)という巨鳥「フリカムイ」の伝説もあります。
巨鳥の伝説は世界各地にあるものですが、それだけ当時の人々にとって空を飛ぶ鳥というのは摩訶不思議でスケールの大きなものに見えたのでしょうね。
中に入ると、まずアイヌに伝わる弦楽器「トンコリ」をモデルとした木彫工芸作品「ポロ トンコリ」が展示されています。
本来の「トンコリ」が両手で持つ程度のサイズであるのに対して、「ポロ」が「大きい」の意味です。確かにこのサイズは大迫力です!
展示室はスロープを下った先にあります
下階へのスロープの途中にも展示があります。生活道具などの展示は他の施設にももちろんありますが、こうした仕掛け罠の展示は珍しいかもしれません。
こちらの「タマサイ」については、アイヌの文化を理解するにあたって特徴的なアイテムなのだとか。というのも、石、金属、ガラス玉など複数の素材が複合された製品であり、さらに石やガラスの先につける、この写真では円形の金属の板がつけられている部分ですが、ここには様々なものがつけられていたのだそう。
これらの材料は自分たちで集めたものの他に、日本を含め、外国・他の部族などとの交易によって得られた素材が使われ、金属板のほか、外国の硬貨などがつけられていたものもあったのだそうです。
彼らは、自分たちで作れるものは当然作りますが、交易によって得られた製品を積極的に取り入れていたのだということですね。
このような背景を考えると、服飾品や生活に使っていた道具ももちろんある程度の傾向はあるのですが、たとえば地域ごとに、あるいは集団ごとに、どのような相手と交易をしていたかによって、一見するとまったく異なる文化のアイテムに見えるようなものもありそうです。
こちらは「イケマ」の根とのこと。イケマはキョウチクトウ科ガガイモ亜科の植物で、アイヌ語で「イ・ケマ」といい、「それの足」という意味なのだそうで、この「それ」というのはカムイのことを指しているのではないかとされています。
呪術用に使われたほか、食用にも用いられたようですが、全草にシナンコトキシンという有毒物質(アルカロイド)が含まれており、重症の場合は痙攣・嘔吐などの中毒症状が起こるとのこと。
焼いたり煮たりして食べていたとのことで、毒のある植物を熱分解で毒成分を破壊して食べるという意味では、救荒植物として位置づけられるヒガンバナなどと近いエピソード性を感じますね(毒成分は異なりますが)。
この「食べていた」というのが、「山野にあり、適切に処理すれば食べられるもの」と位置づけられていたのか、あるいは「どうしても食べるものがないときにはイケマも食べられる」という位置づけだったのか…
どちらかといえば、魔除けや呪術用、あるいは漢方では「午皮消根」と呼ばれる生薬であることから、薬用としての用途が中心だったのかなとも思えます。
もう少し詳細に調べてみたいところです。
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展示室内部の資料点数も豊富!
さて、スロープを下って右側に行くと展示室があります。(展示室のみ有料)
展示室に入ると、まず職人の手によって再現された衣装の展示があります。この展示物は、ハンガーを動かして観覧することができ、表面・裏面をじっくり見ることができます。
こちらは先程の「タマサイ」の一種です。菊の御紋!?と驚いていたのですが、やはり日本から輸入されたものであろうとのことです。
この「メノコイナウ」などの装飾品につけられているのは、コイン(貨幣)です。この展示で見られたのは日本の貨幣でしたが、日本で博覧会が開かれるようになった明治時代以降、本州へアイヌが趣き舞踊などを披露して、海外の貨幣などをもらい持ち帰ったこともあったようです。
このほか、狩猟に使う道具や
生活に使う道具
罠猟のための罠の再現などが展示されています。
こちらの「チェプウル」は、サケ・マスなどの魚の皮を使って作った衣服です。
展示ご担当の職員の方に教えていただきましたが、注目するべきは袖と裾です。
日本の着物などとは異なり、脇から袖に向かって細くなっており、また裾はスカートのように広がっています。
袖が細くなっているのは寒い地域の服の特徴(寒い空気が入らないようにするため)であり、裾が広がっているのは「ズボン型」の下衣を着る、やはり北方系の文化の特徴です。
<よく見ると、魚のヒレがありますね。
「北方系」にもいろいろな種類があることは言うまでもありませんが、このチェプウルについては、おそらくサハリン(樺太)アイヌが主に使用していたものだろうとのことでした。
ちなみに、魚の皮で作られている衣服の耐久性については、「1年持てばよい」という考え方だったよう。というのも、毎年大量にサケを食料として獲るため、次のサケ漁の際にまた新しいチェプウルを作る、というような考え方だったようですね。アイヌにとってのワンシーズン用ファッションといったところでしょうか。
丸木舟「チプ」もあります!
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サッポロピリカコタンは「体験型」も特徴
さて、展示室には魅力的な展示が多数ありましたが、サッポロピリカコタンの魅力はそれだけではありません。
その魅力とは「体験型」であることです。サッポロピリカコタンには様々な「体験型」コンテンツが用意されています。
展示室内部にある、映像を利用したアイヌ語のコンテンツや
「アイヌ文様を書いてみよう」のコーナー
「染色」や「木皮加工」
展示室手前には、「写真撮影コーナー」もあります。ここでは、アイヌの衣装を着用して写真撮影ができます。希望すれば、弓矢なども持たせてもらえます!
「レストコーナー」には、「ゴールデンカムイ」のパネルも設置されていました。
おわりに
札幌市内にも、札幌駅地下にある「Minapa(ミナパ)」など、アイヌ文化の発信を行っている場所が増えました。
「サッポロピリカコタン」は、資料点数も豊富で、かつ体験型コンテンツが用意されていて、お子さま連れで来ているご家族も多くいるなど、非常に学びの多い施設であると感じました。
札幌市中心部から車で30分前後で行けるサッポロピリカコタン、定山渓温泉や小金湯温泉に行く際に立ち寄ってみてはいかがでしょうか!
施設情報
○施設名:札幌市アイヌ文化交流センター(サッポロピリカコタン)
○住所 :〒061-2274 北海道札幌市南区小金湯27
○URL :https://www.city.sapporo.jp/shimin/pirka-kotan/
○地図 :
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